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自律神経失調症やホルモンバランスの乱れが気になる方の症状におすすめの漢方薬6選!

【この記事の監修者】

千田信子(薬剤師・国際中医師)

株式会社自然の薬箱 代表取締役。薬剤師としての長年の経験に加え、国際中医師として東洋医学の知識を活かし、多くの方々の健康をサポートしている。漢方薬や自然療法を取り入れた独自のアプローチで、心と体のバランスを整えることを目指している。現在は、漢方薬局での漢方相談の他、アロマやハーブ・薬膳などの講座、ヨガや気功などのレッスンの開催を通じて多方面で活動中。
【取得資格】
・薬剤師
・国際中医師
・ (公社)日本アロマ環境協会(AEAJ)認定 アロマセラピスト
・ AEAJ認定アロマテラピーインストラクター
・AEAJ認定アロマブレンドデザイナー
・yuica認定日本産精油スペシャリスト
・グリーンフラスコ認定J-herbマイスター

※監修者は記事執筆者とは異なります
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日頃から原因不明のめまいや頭痛に悩んでいませんか?あなたの気になる不調は、もしかしたら自律神経失調症が原因かもしれません。

この記事では、自律神経失調症の概要や原因、おすすめの漢方薬について解説します。また、漢方薬を服用する際の注意点や日常生活でできる自律神経を整える工夫も紹介します。ぜひご覧ください。

自律神経失調症とは

自律神経は全身の器官を制御する神経系であり、内臓機能やホルモンの調整を担っています。
自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経はアクセルのように作用して心拍・血圧・体温などを上昇させ、体の機能を活発化させる神経です。一方、副交感神経はブレーキの役割を果たし、心身をリラックスさせて休息モードに切り替える神経です。

この神経の切り替えによって心身の健康が維持されていますが、うまく機能しないと様々な不調が生じてしまいます。

自律神経の主な働き

自律神経の主な働きは「体の生命維持活動を調整すること」で、呼吸・体温・血圧・心拍・消化・代謝・排尿・排便といった生命活動を意識せずに維持してくれます。

この神経系は脳の視床下部に中枢があり、そこから全身に広がって臓器の機能を制御しています。自律神経は24時間365日休むことなく活動し、ストレスや環境の変化に対応して体を調整し、最適な状態を維持してくれます。

自律神経失調症の症状

自律神経失調症の主な症状は、身体的な面では全身のだるさ、疲れやすさ、頭痛、動悸、不眠、ほてり、食欲不振などがあります。精神的な面ではイライラ、気分の落ち込み、不安感、やる気や集中力の低下が挙げられます。

これらの症状は「不定愁訴(ふていしゅうそ)」と呼ばれ、西洋医学的な検査をしても異常が見られないことが特徴です。原因が不明瞭であるため、適切な治療を受けられないケースもあります。

自律神経失調症の原因

自律神経失調症の原因として、以下の要因が挙げられます。

  • ストレス
  • 生活習慣の乱れ

1つずつ解説します。

ストレス

過度なストレスは交感神経と副交感神経のバランスを崩し、自律神経失調症の原因になりえます。

生活習慣の乱れ

生活習慣の乱れも自律神経に悪影響を及ぼします。例えば、昼夜逆転の生活で体のリズムが乱れると「休息と活動の切り替え」がスムーズに行われず、自律神経が適切に活性化できなくなります。

加えて、不規則な食生活や偏食が続くと必要な栄養素が不足し、神経伝達物質の乱れを引き起こして脳内の血行も悪化します。その結果、自律神経の乱れにつながるのです。

自律神経失調症に漢方薬が処方される理由

自律神経失調症に伴う症状には、漢方薬が処方されることがあります。それは、東洋医学における自律神経失調症の主な原因が「気(き)」や「血(けつ)」のトラブルであるとされているからです。

漢方薬には「気」や「血」の状態を改善する作用のある処方があり、自律神経失調症による様々な症状を緩和することが期待できます。体のエネルギーや血流を整えることで、つらい症状を改善できると言われています。

おすすめの漢方薬の選び方

漢方薬の種類は多岐にわたり、どれを選んだらいいのか分からない方も多いかもしれません。この章では、おすすめの漢方薬の選び方について解説します。

効能・効果を確認する

漢方薬は複数の生薬が組み合わさって成り立ちます。

例えば、風邪の時によく使用される「葛根湯」は、その名前にある葛根(カッコン)だけでなく、他にも6種類の生薬からなる処方です。

漢方薬を選ぶ際は、個々の生薬の成分に注目するよりも、全体的な効能・効果に注意を払うことが重要です。

続けやすさや飲みやすさを確認する

続けやすさや飲みやすさを確認することも重要です。漢方薬には特有の味やにおいがあるため、中には味やにおいに対して苦手意識がある方もいるでしょう。しかし、最近では錠剤タイプの漢方薬も増えており、味やにおいの問題をそれほど気にせず服用できるようになりました。

顆粒や錠剤など自分の好みに合った形状を選ぶことで、薬を続けやすくなります。また、価格もメーカーによって異なるため、自分に合った範囲で選ぶことが重要です。

おすすめの漢方薬6選

おすすめの漢方薬は以下の6つです。

  • 加味帰脾湯(かみきひとう)
  • 加味逍遥散(かみしょうようさん)
  • 黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
  • 抑肝散(よくかんさん)

それぞれの特徴や効果について解説します。

加味帰脾湯(かみきひとう)

加味帰脾湯は、心身が疲れているときの精神不安や不眠に効果的な漢方薬です。体が弱く血色が悪い、疲れやすく気力が出ない方におすすめします。

加味逍遥散(かみしょうようさん)

加味逍遥散は、体質が虚弱な女性に適した漢方薬です。のぼせやすい方に向いています。
肩こりや疲れやすさ、イライラ、不安などの神経症状、便秘傾向がある方に効果的です。さらに不眠のような神経症状などに効果があります。血(けつ)を補う作用があるため、生理トラブルや更年期障害の改善も期待できます。

黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

黄連解毒湯は比較的体力があり、のぼせぎみで顔色が赤く、イライラしやすい方に適した漢方薬です。神経過敏な状態を鎮める作用があるため、不安症状や不眠が認められる際に使用されます。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

桂枝茯苓丸は、下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、足冷えなどがある人に適した漢方薬です。血流を良くすることで熱を対流させ、足の冷えがあるが、上半身がのぼせ気味の方の症状を改善します。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

当帰芍薬散は、足腰が冷えやすい人に対して効果的な漢方薬です。血の巡りを促進し余分な水分を排出することで、つらい症状を改善することが期待できます。また、むくみの症状も改善してくれます。

抑肝散(よくかんさん)

抑肝散は神経の高ぶりを抑える作用があり、神経症、不眠症、小児夜泣きなどの治療によく用いられる漢方薬です。
吐き気などの胃腸症状がある方の場合は、抑肝散に陳皮と半夏を加えた抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)もおすすめです。

漢方薬を飲むときの注意点

漢方薬を飲むときには、いくつかの注意点があります。

まず、適切な服用方法は、基本的に食前(食事の約30分前)か食間(食事と食事の間で、食事から約2時間後)が良いでしょう。また、用法・用量を守れば子どもへの服用も可能ですが、漢方薬によって使用可能な年齢や妊娠中の注意事項が異なるため、使用前には「使用上の注意」をよく読みましょう。

疑問があれば服用前に医師や薬剤師、登録販売者に相談してください。

副作用

医薬品である漢方薬は、使用することで引き起こされる副作用が発生する可能性があります。

とくに妊娠中の方や医師の治療を受けている方、薬などにより発疹・発赤やかゆみ等が出たことのある方は、事前に医師や薬剤師、登録販売員に相談することが大切です。

加えて、以前に同様の薬を使用したことで体調が悪くなった経験がある場合には、その薬の使用は控えるようにしましょう。

日常生活で自律神経やホルモンバランスを乱さないようにする方法

日常生活で自律神経やホルモンバランスを乱さないようにする方法は以下の通りです。

  • 生活習慣を整える
  • ストレスを溜めない

漢方薬などの薬だけでなく普段の生活を見直すことで、つらい症状を緩和・予防することができます。ぜひ取り入れてみてください。

生活習慣を整える

自律神経を整えるためには、生活リズムや生活習慣を整えることが大切です。

具体的な対策として、以下のような対策が挙げられます。

  • 朝はカーテンを開けて日光を浴びること
  • 眠れなくても夜はベッドに入る習慣をつけること
  • 適度な運動習慣を取り入れること

朝は決まった時間に起き、日光を浴びることで、睡眠を促すホルモンである「メラトニン」の分泌が抑制され、「セロトニン」の分泌が促されます。メラトニンの分泌が抑えられることで、すっきり目を覚ますことができます。また、セロトニンは、精神の安定や脳を活発に働かせる鍵となる脳内物質で、ストレスに対して効果があり、幸せホルモンともいわれます。セロトニンは、約12時間後にメラトニンに変換され、睡眠・覚醒リズムを調節しています。昼夜逆転の生活を送りがちな場合は、夜はベッドに入る習慣をつけることが効果的です。

また、適度な運動はストレスの解消につながり自律神経失調症を改善してくれるかもしれません。生活習慣を変えることは難しいかもしれませんが、少しずつ改善を試みることが重要です。

ストレスを溜めない

日常のストレスは、自律神経に大きな影響を与える要因となります。しかし、ストレスを完全に排除することは難しいでしょう。そこで、自分に適したストレス解消法をいくつか用意しておくのがおすすめです。

例えば、「好きなことを楽しむ」「人と話す」「嫌な気持ちをノートに書く」「専門家に相談する」など、自身に合った方法を見つけておきましょう。

【まとめ】自律神経失調症やホルモンバランスの乱れを改善させよう

自律神経失調症やホルモンバランスの乱れを改善するには複数の選択肢があります。漢方薬を使用する際には体質や病態に合ったものを選ぶことが大切です。また、副作用や他の薬との相互作用も考慮されるため、服用前には医師や薬剤師に相談しましょう。

薬の服用だけでなく、日常生活の工夫でも改善は可能です。ストレス社会での生活においては、自律神経の乱れが体調不良を招くケースも多いため、毎日の生活習慣を見直しましょう。