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生理とホルモンバランスの関係とは?女性ホルモンが乱れる原因も解説

【この記事の監修者】

千田信子(薬剤師・国際中医師)

株式会社自然の薬箱 代表取締役。薬剤師としての長年の経験に加え、国際中医師として東洋医学の知識を活かし、多くの方々の健康をサポートしている。漢方薬や自然療法を取り入れた独自のアプローチで、心と体のバランスを整えることを目指している。現在は、漢方薬局での漢方相談の他、アロマやハーブ・薬膳などの講座、ヨガや気功などのレッスンの開催を通じて多方面で活動中。
【取得資格】
・薬剤師
・国際中医師
・ (公社)日本アロマ環境協会(AEAJ)認定 アロマセラピスト
・ AEAJ認定アロマテラピーインストラクター
・AEAJ認定アロマブレンドデザイナー
・yuica認定日本産精油スペシャリスト
・グリーンフラスコ認定J-herbマイスター

※監修者は記事執筆者とは異なります
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  • 生理前は調子が悪い
  • いつも通り生理が来ない

こうした症状に悩まされた経験はありませんか?
もしかしたら、原因はホルモンバランスの乱れかもしれません。女性ホルモンと生理は非常に密接な関係にあるため、ホルモンバランスの乱れは様々な生理の不調の引き金になることもあるのです。
今回は生理とホルモンバランスの関係や乱れる原因、解決策について紹介します。

女性の体とホルモンバランス

卵巣で分泌される女性ホルモンは、女性のこころと体を健康に保つために大切な物質です。ホルモンとは体内の各器官の働きを助ける化学物質のことで、例えば体の成長やエネルギーの代謝、消化機能などに大きな影響を与えています。
女性ホルモンは

  • エストロゲン
  • プロゲステロン

以上の2つの物質を指します。エストロゲンとプロゲステロンは生理周期に伴い増減を繰り返しており、一般的にこれら2つのバランスを女性にとっての「ホルモンバランス」といいます。それぞれのホルモンの働きについて、以下で詳しく解説します。

エストロゲン

エストロゲンは生理開始〜排卵まで(卵胞期)に比較的多く分泌されることから、別名「卵胞ホルモン」ともいいます。エストロゲンは以下の働きがあります。

  • 乳房のふくらみや体の丸みなど「女性らしい体づくり」を助ける
  • 妊娠に備え、子宮内膜を厚くする
  • 肌ツヤやハリを保つ
  • 骨密度をアップさせる
  • コレステロール値などを整え血管の流れをスムーズにする
  • 自律神経の働きを安定させる

エストロゲンが増えていく卵胞期は、肌の調子も精神状態も安定しているという人が多いのではないでしょうか。

プロゲステロン

プロゲステロンは排卵〜生理開始までの間(黄体期)に多く分泌されることから、別名「黄体ホルモン」ともいいます。
プロゲステロンには以下の働きがあります。

  • 子宮内膜を柔らかく安定させ、受精卵が着床しやすい状態にする
  • 水分や栄養素をため込みやすくする
  • 食欲を増進させる
  • 体温を上げる
  • 眠気を誘う

プロゲステロンはひと言でいうと、妊娠を維持するためのホルモンです。しかし、プロゲステロンが多く分泌される黄体期はむくみやすい、眠いなどのマイナートラブルが起こりやすくなります。また、男性ホルモンに似た働きもするため、皮脂の分泌をうながすことから、毛穴が詰まりやすくなる、顎にきびができやすくなるなどが挙げられます。

生理のしくみ

生理は、エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンの影響を受けています。生理は、以下の3つの時期に分けられます。

  • 卵胞期
    厚くなった子宮内膜が剥がれ落ち、生理が始まる。同時に卵胞が成長を始めエストロゲンが分泌され、エストロゲンの血中濃度も上昇し続ける。
  • 排卵期
    成熟した卵胞から卵子が飛び出す。プロゲステロンの分泌が始まる。
  • 黄体期
    卵子を放出して破れた卵胞が黄体に変化する。プロゲステロンの血中濃度が上がり、子宮内膜が厚くなる。

生理周期は個人差がありますが一般的に25 〜38日間です。生理周期に伴う女性ホルモンの変化は体温にも影響します。エストロゲンが過剰に分泌される生理開始〜排卵前は低温期、プロゲステロンが多く分泌される排卵〜生理開始までを高温期ともいいます。

生理の不調とホルモンバランスの影響

ホルモンの分泌によって厚くなった子宮内膜が、妊娠しなかった場合に剥がれ落ちる現象が生理です。
ホルモンバランスが乱れると、生理に関して様々な不調が現れます。例として次の2つが挙げられます。

  • 生理不順
  • PMS

それぞれの症状について解説します。

生理不順

正常の生理周期日数が不定期なことを生理不順といいます。生理の周期は一般的に25〜38日と定義されており、1週間程度のずれなら問題ありません。しかし、その範囲から大きくずれる場合は一般的に生理不順と診断されます。生理不順の症状の例として以下の2つが挙げられます。

  • 過少月経
  • 過多月経

各症状について解説します。

過少月経

経血量が少ない場合(1周期あたりの総出血量が20mL以下)は、過少月経と診断される可能性があります。2日目でもナプキンに少し血がつく程度、あるいはおりものシートだけでカバーできる出血量の場合は過少月経を疑って良いでしょう。過少月経の場合、無排卵周期症、甲状腺ホルモンの分泌異常などの疾患や、子宮に何らかの異常がある可能性があるなど隠れた病気がホルモンバランスの乱れの原因となっているケースもありますので、長く続く場合は婦人科の受診をおすすめします。

過多月経

経血量が多い場合(1周期あたりの総出血量が140mL以上)は過多月経と診断されることがあります。例えば、多い日用のナプキンでも1時間ごとに交換しなければ間に合わない、レバーのような大きな塊が出る場合は過多月経かもしれません。過多月経の場合も、無排卵周期症、子宮腺筋症や子宮筋腫などのリスクが考えられますので、長く続く場合や痛みを伴う場合は婦人科を受診しましょう。

PMS

PMSは月経前症候群(Premenstrual Syndrome)の略称で、生理の3〜10日前に続く身体的・心理的不調のことを指します。原因は、黄体期の後半にエストロゲンとプロゲステロンが急激に低下することから、脳内の神経伝達物質やホルモンに異常が起こるためと考えられています。具体的な症状は以下の通りです。

  • イライラ、不安などの情緒不安定
  • 抑うつ
  • 睡眠障害
  • 眠気
  • 食欲不振あるいは過食
  • のぼせやめまい
  • 倦怠感
  • むくみ
  • 腹痛や腰痛、頭痛

生理不順に影響するホルモンバランスが乱れる原因

ホルモンバランスは生理と密接に関係しており、乱れると様々な不調を引き起こします。ホルモンバランスが乱れる原因は、多くの場合以下の2つのケースに該当すると考えられています。

  • ストレス
  • 睡眠不足など不規則な生活

ストレス

ストレスは女性ホルモンを乱す大きな原因になります。女性ホルモンは卵巣から分泌されますが、脳の視床下部や脳下垂体がその命令を司っています。脳の視床下部と下垂体はストレスの影響を受けやすいため、ストレス過多の環境にいると「ホルモンを分泌させよう」という命令が上手く伝わらなくなるのです。
本人に自覚がなくても、気温の大きな変動や環境の変化がストレスの原因になっているケースもあります。

睡眠不足など不規則な生活

睡眠不足の状態が続くと、脳の視床下部の機能や自律神経が乱れて女性ホルモンの分泌も上手くいかなくなります。無理なダイエットや過労なども同様に脳に悪い影響を与えます。ダイエットで栄養不足になると脳の視床下部が生命の危機を察知し、生命機能の維持を優先しようとするためです。

ホルモンバランスの乱れをチェックする方法

ホルモンは女性の体に大きな影響を与えますが、目に見えないため自己管理が難しいという一面があります。ホルモンバランスが乱れているかチェックするために、以下の2つの方法がおすすめです。

  • 基礎体温表をつける
  • チェックリストで確認する

基礎体温表をつける

ホルモンバランスは体温の変化に現れるため、基礎体温を測ることで正常に分泌されているか否かが分かります。基礎体温の測り方は以下の通りです。

  1. 枕元に婦人体温計を準備してから就寝する
  2. 朝、目覚めたら体を動かさず横たわったままで感温部を舌の裏側の付け根に当てる
  3. 口を閉じたまま、体温計を舌で抑え計測する
  4. 基礎体温表に記録する

ホルモンバランスが整っていれば、生理開始から排卵前までの約2週間は低温期になります。そして排卵〜生理開始までの約2週間は高温期になり、体温が0.5度ほど上昇します。現在では、簡単に記録できるアプリや、アプリと連動して自動的に記録できる基礎体温計も販売されています。忙しい方はぜひチェックしてみてください。

生理不順などに影響するホルモンバランスを整える5つの方法

生理不順や様々な不調につながるホルモンバランスは以下の方法で整えられます。

  • 食生活を改善する
  • 睡眠を十分にとる
  • ストレスを軽減させる
  • 適度に運動する
  • 無理なダイエットをしない

食生活を改善する

バランスの良い食生活はホルモンバランスを整えるために非常に重要です。具体的には、以下に挙げる栄養素をバランスよく摂ることが理想とされています。

  • 動物性タンパク質
    肉や魚、乳、卵など。特に青魚はDHAやEPAが豊富なのでおすすめです
  • 植物性タンパク質
    大豆や納豆などの豆類に多く含まれます。動物性の食品と比較するとエネルギー量が抑えられるため、たくさん食べることができて満足感が得られやすい点もおすすめです
  • 野菜
    葉野菜と根菜をバランスよく食べ、ビタミンや食物繊維、カリウムを摂取しましょう
  • 海藻類
    ミネラルが豊富で、カロリーも低いのでおすすめです
  • ナッツ類
    ビタミンB群・Eなどがバランスよく含まれており、美容にも効果てきめんです
  • きのこ類
    ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富で低カロリーなのが特徴です

睡眠を十分にとる

良質な睡眠はホルモンバランスを整える働きがあるため、毎日7〜8時間の睡眠をとることが理想です。睡眠の質を高めるために、寝る前のPCやスマホでの作業は避けましょう。ぬるま湯での半身浴や就寝前のブルーライトカットを心がけることで、質の良い睡眠につながります。

ストレスを軽減させる

ホルモンバランスを整えるためには、ストレスと距離を置くのが理想です。しかし、ストレスのもとを全て絶つのは忙しい女性にとっては困難です。そこで、ストレスを発散するためにリラックスできる習慣を日常に取り入れましょう。
ストレス発散法は人によって異なります。趣味の活動や友人とのお喋りがリフレッシュになる方もいれば、1人でゆっくりする時間を取ることでこころが軽やかになる方もいるでしょう。自分にとって負担にならないリフレッシュ方法を、1日数分でも構わないので取り入れてみてください。

適度に運動する

適度な運動は血流を良くし自律神経を整えるため、ホルモンバランスの改善につながります。中でも、ランニングやウォーキングなどの有酸素運動、ヨガ、ストレッチ、ピラティスは効果が期待できます。過酷なスケジュールの運動は心身ともにストレスになる可能性があるので、日常生活に無理のない心地よい範囲で取り入れましょう。

無理なダイエットをしない

減量に成功してもホルモンバランスが乱れては、こころも体も健康で美しくいられません。過度な食事制限や運動を控えた、健康的なダイエットを心がけてください。

【まとめ】生活習慣を見直し生理不順に影響するホルモンバランスを整えよう

生理不順の原因の1つとなるホルモンバランスの乱れは、多くの場合生活習慣の乱れやストレスによって誘発されます。そのため、生理周期を整えるには、規則正しい生活習慣やストレスを軽減させることが大切です。ホルモンバランスが整えば肌ツヤが良くなり、情緒も安定するという嬉しい効果もあります。なかなかすぐに生活習慣を変えられない方は、漢方の力を借りるのもおすすめです。少しずつ毎日の生活を整えて、健やかな毎日をめざしましょう。