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わたしの健康学

女性のホルモンバランスの乱れチェックリストや整える方法を紹介

【この記事の監修者】

千田信子(薬剤師・国際中医師)

株式会社自然の薬箱 代表取締役。薬剤師としての長年の経験に加え、国際中医師として東洋医学の知識を活かし、多くの方々の健康をサポートしている。漢方薬や自然療法を取り入れた独自のアプローチで、心と体のバランスを整えることを目指している。現在は、漢方薬局での漢方相談の他、アロマやハーブ・薬膳などの講座、ヨガや気功などのレッスンの開催を通じて多方面で活動中。
【取得資格】
・薬剤師
・国際中医師
・ (公社)日本アロマ環境協会(AEAJ)認定 アロマセラピスト
・ AEAJ認定アロマテラピーインストラクター
・AEAJ認定アロマブレンドデザイナー
・yuica認定日本産精油スペシャリスト
・グリーンフラスコ認定J-herbマイスター

※監修者は記事執筆者とは異なります
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  • 病気ではないけど調子が悪い
  • 最近疲れやすい
  • いくら寝てもだるさが残る

という経験はありませんか?そのような不調の原因は、もしかしたらホルモンバランスの乱れにあるかもしれません。女性のこころや体はホルモンの影響を受けやすいため、ホルモンバランスが乱れると様々な不調が発生します。

今回はホルモンバランスが乱れているかどうかの目安として、チェックリストを紹介します。原因の分からない不調にお悩みの方は是非お試しください。

ホルモンバランスの乱れチェックリスト8項目

ホルモンバランスの乱れは様々なトラブルの引き金となりますが、目に見えないためなかなか自分では気づきづらいのが特徴です。そこで、ホルモンバランスの乱れのサインを8項目のチェックリストにまとめました。当てはまるものがあればチェックしましょう。

  • 生理周期が乱れている
  • 生理痛が重い
  • 生理の血量が増えた、レバーのような塊が混ざる
  • 生理の血量が減った
  • 生理に伴い体調不良が起こりやすい
  • 生理前は情緒が不安定になる
  • 顔や手足がよくむくむ
  • 肩こりや腰痛がある

当てはまる項目が多ければ注意が必要

これら8項目の中で、チェックはいくつ付きましたか。チェック項目が多い方はホルモンバランスが乱れている可能性があるため、注意が必要です。必要に応じて、受診することも検討しましょう。

体調面に現れる症状

ここからは、ホルモンバランスの乱れに関する症状を、体調面、精神面、美容面に分けて解説します。ホルモンバランスの乱れが原因で、体調面に現れる症状は以下の通りです。

  • 生理周期が乱れている
  • 生理痛が重い
  • 生理前の不調が気になる
  • 汗をかきやすい
  • 手足が冷えやすい

普段と比べて生理周期が長く症状が重い、または量が少なく期間が短いと感じる方はホルモンバランスが乱れているかもしれません。その他にも、顔がほてり、汗をかきやすいなどの症状も更年期などのホルモンバランスの乱れである可能性があります。

精神面に現れる症状

ホルモンバランスの乱れが原因で、精神面に現れる症状は以下の通りです。

  • イライラしやすい
  • 不安を感じやすい
  • 何事にも無気力で、やる気が出ない
  • 寝ても疲れが取れない、日中ひどく眠いのに夜眠れない
  • 仕事や家庭でストレスを感じやすい

いわゆる女性ホルモンのうちエストロゲンとプロゲステロンは、脳の視床下部からの命令が卵巣に伝わることで分泌されます。しかし更年期を迎えるなどして卵巣機能が低下すると分泌量が減少し、情緒の乱れを引き起こします。また、エストロゲンが減少すると「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンが減少します。セロトニンは精神を安定させる役割があるため、分泌量が減少するとストレスを感じやすくなります。その結果、イライラした気分に陥りがちになるのです。

美容面に現れる症状

ホルモンバランスの乱れが原因で、美容面に現れる症状は以下の通りです。

  • ニキビや吹き出物ができやすい
  • 髪や肌が乾燥してカサカサしている
  • 顔や体がむくみやすい
  • 鼻の下の毛やすねの毛が濃くなった
  • 爪が割れやすい

「美肌ホルモン」とも呼ばれるエストロゲンは、ヒアルロン酸やコラーゲン、エラスチンなどの生成を助けています。しかし、エストロゲンが減少するとこの役割がうまくいかなくなり、肌荒れや乾燥など上記に記載した症状を起こしやすくなるといわれています。

そもそもホルモンバランスの乱れとは

女性ホルモンはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つのホルモン物質で構成されており、これらの分泌量のバランスをホルモンバランスと言います。エストロゲンは、肌をつややかに保つ、女性らしい体を作るなどの作用があります。対してプロゲステロンは着床に備えて子宮をふかふかにする、体温を高くするなど妊娠しやすい体を作る役割を果たしています。
これら2つは生理周期によって増減を繰り返していますが、何らかの理由でトラブルが発生するとバランスが崩れます。このことを一般的に「ホルモンバランスの乱れ」と言います。

ホルモンバランスが乱れる原因

ホルモンバランスの乱れは様々な不調を引き起こしますが、原因は何気ない日常に潜んでいることも。ホルモンバランスを乱す例として以下の3つが挙げられます。

  • ストレス
  • 不規則な生活
  • 加齢

以下でそれぞれについて説明します。

ストレス

先ほど述べたようにホルモンは脳の視床下部からの命令で分泌されます。視床下部はこころの影響を非常に受けやすいため、ストレスを感じると脳からの命令が乱れ、卵巣から分泌されるホルモンのバランスが崩れてしまうのです。また、無理なダイエットも同様の影響を与えます。

不規則な生活

不規則な生活とは、

  • 偏った食生活
  • 睡眠不足
  • 運動不足
  • オンとオフのメリハリがない

などの生活習慣を指します。近年では在宅ワークが定着したことから、日常生活に仕事が溶け込んだスタイルになり、仕事とプライベートの切り替えがうまくいかない方が増えました。また、気づいたら、しばらく日光を浴びていない、や、デリバリーやインスタント食品などの偏った食事が多くなってしまっている方も。そのようなライフスタイルは脳の視床下部の機能に影響を与え、ホルモンバランスを乱します。ひいては、生活習慣病やうつ病の原因になることもあるのです。

加齢

女性ホルモンは10歳前後から分泌が始まりますが、30代後半頃から分泌量が徐々に減少しはじめ、閉経前後の45~55歳頃になると激減します。加齢によるホルモンバランスの変化による不調は、多くの女性に訪れるといわれているのです。そして、閉経後は、骨粗しょう症や心血管系疾患などのトラブルが起きやすくなります。

ホルモンバランスの乱れから起こる3つの症状

ホルモンバランスが乱れる原因はストレスや生活習慣、加齢などにあるようです。ホルモンバランスの乱れから起こりうる以下の3つのトラブルについて説明していきます。

  • 生理不順や不妊など
  • 自律神経失調症
  • 更年期障害

生理不順や不妊など

ホルモンバランスの乱れは生理に最も顕著に現れます。特に多く見受けられる症状は生理不順です。一般的には生理は25~38日の周期で3~7日間続くのが正常範囲とされており、それより極端に短いあるいは長い場合や周期が不安定な場合、生理不順と診断されます。またホルモンバランスの乱れによって、排卵や着床にも影響を及ぼし、妊娠しづらい体になることもあると言われています。

自律神経失調症

自律神経失調症とは、自律神経の乱れから起こるこころや体の不調を指します。自律神経は脳の視床下部によってコントロールされており、、本人の意志とは関係なく呼吸や体温調節をはじめとする体の機能を調節しています。自律神経のバランスが崩れる直接的な原因は特定されていませんが、ストレスや生活習慣の乱れと共に女性のホルモンバランスも影響していると考えられています。なぜなら女性ホルモンと自律神経系は、脳の視床下部を介して深い関係にあるからです。自律神経失調症になると、こころや体に様々な症状が起こります。具体的には

  • めまい
  • 肩こり
  • 動悸や息切れ
  • 食欲不振、胃痛
  • 下痢や便秘
  • 不眠、寝汗
  • イライラ
  • 不安感
  • 無気力

などの症状が挙げられます。

更年期障害

一般的に閉経の前後5年を「更年期」と言います。エストロゲンの著しい減少によって、いわゆる更年期障害というトラブルが多発します。具体的な症状は

  • ホットフラッシュ、ほてり、のぼせなどの血管拡張による症状
  • イライラ、不眠、落ち込みなどの不安定な精神的状態
  • めまい、しびれ、動悸などの身体的不調

などが挙げられます。

ホルモンバランスの乱れは男性にも起こる

ホルモンによる不調は女性特有のものだと思っていませんか?実は男性にもホルモンバランスの乱れによるトラブルはあるのです。男性の場合、テストステロンという男性ホルモンの減少によって、疲れやすさやイライラなどの症状が起きます。男性の場合も更年期にホルモンバランスの乱れが生じやすく、疲労やストレスによって、症状が出やすくなります。この年代の男性で、理由の分からない不調を抱えている方がいるのであれば、原因はホルモンバランスの乱れかもしれません。

ホルモンバランスを整える5つの方法

ホルモンバランスが乱れると、身体的、精神的に様々な不調が起こり日常生活に困難が生じます。ホルモンバランスを整えるためには以下の5つの方法がおすすめです。

  • 栄養バランスのとれた食事を摂る
  • 睡眠を十分に取る
  • 疲れすぎない程度の運動を行う
  • ストレスを溜めない
  • 漢方を取り入れる

栄養バランスのとれた食事を摂る

食事はホルモンバランスを整えるために非常に重要です。炭水化物やたんぱく質、野菜、良質な油などがバランス良く取れる献立を、毎日3食規則正しく摂ると良いでしょう。

睡眠を十分に取る

質の良い睡眠はホルモンバランスを安定させるために欠かせません。0時までには就寝し、7時間ほどの睡眠をとることが理想とされています。また、睡眠の質を高めるために、

  • 寝る直前はスマートフォンやタブレットを見ない
  • 日中は太陽光を浴びる
  • 睡眠前にストレッチやヨガをする

などの生活習慣を取り入れるとさらに効果的です。

疲れすぎない程度の運動を行う

体を動かし、血行と代謝を改善することで、女性ホルモンにも良い影響を与えることができると考えられています。ヨガやピラティス、ウォーキングなどの有酸素運動のほかに、筋肉トレーニングなどがおすすめですが、無理のない程度に取り入れましょう。「必ず週〇日、〇分」と決めてしまうと、運動習慣自体がストレスになる可能性があるからです。できる時に楽しめる範囲で、日常生活に運動を取り入れてください。

ストレスを溜めない

過度な精神的・肉体的ストレスはホルモンバランスに非常に大きな影響を与えます。しかし、仕事や育児に忙しい女性にとって完璧にストレスを排除することは困難です。そのため、ストレス解消法をうまく日常に取り入れることが大切です。だからといって、無理に趣味を作る必要はありません。例えば1日数分でも、好きな香りを嗅いだり、カフェでコーヒーを飲む時間を作ってみるだけでいいのです。自分がリラックスできる時間を作って、こころと体を休めてください。

漢方を取り入れる

ホルモンバランスの乱れによる症状には、漢方を取り入れるのもよいでしょう。漢方薬は生薬で「体本来の機能を取り戻し、自分自身の体の力で不調を治す」という考えのもと作られています。ですから、ホルモンバランスの乱れからくるような「不定愁訴(ふていしゅうそ)」と言われる、病名のつかない不調に対応できる処方が多いのです。中でも

  • 加味逍遥散(疲れやすくイライラしやすい、のぼせ感や肩こりなどがある、生理周期の乱れや更年期障害、血の道症(※1)などに効果的)
  • 桂枝茯苓丸(比較的体力がありのぼせやすい方、顔はほてるけれど足は冷える方の生理不順、生理異常、生理痛、更年期障害、血の道症などに効果的)
  • 当帰芍薬散(冷え性、やめまい、立ちくらみなどがある方の、生理不順、生理異常、生理痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害などに効果的)

この3つは、三大婦人漢方薬として有名で、女性の不調の改善に役立ちます。
(※1)血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。

【まとめ】ホルモンバランスの乱れをチェックし上手にコントロールしよう

今回はホルモンバランスの乱れチェックリストや、ホルモンバランスの乱れが引き起こす症状、解決方法について解説してきました。ホルモンバランスの乱れは、こころや体に様々なサインを送ります。それらを見逃していると、生理不順や自律神経の不調などの症状につながる恐れがあります。「なんだか調子が良くない」という方は是非チェックシートを活用して、体調を把握し、ご自身にあった対処法を実践してみてください。それでも改善が見られない場合や、日常生活に支障をきたすほどの症状がある場合、婦人科系や精神的な疾患を抱えている可能性があるため、受診をおすすめします。日常生活でできるところから改善して、ホルモンバランスの整った快適な毎日を目指しましょう。